公募研究班員
A01  応答ゾーン、連携ゾーンの解析

Msp1によるオルガネラ間コンタクトを介したタンパク質交通の校正

遠藤斗志也
京都産業大学 生命科学部

研究概要

DNAの複製、DNAの情報に基づくタンパク質の合成などと異なり、タンパク質の細胞内交通(オルガネラへの配送)においては「やり直し(校正)」機構は存在せず、誤配送されたタンパク質は単純に分解されるものと考えられていた。しかしわれわれは、ミトコンドリア外膜のAAA-ATPアーゼのMsp1が外膜に誤配送された膜タンパク質の校正を行うことを見出した。すなわちMsp1は誤配送されたタンパク質を外膜からATPのエネルギーを使って引き抜き、ER膜に送り込むことで、ERの強力な品質管理システムに供し、分解か配送のやり直しかが決定されることを見出した(Matsumoto et al., Mol. Cell (2019))。この外膜からER膜への配送やり直しにはER-ミトコンドリアコンタクト(ERMES)が関わることが考えられるが、現時点では直接的な証拠はない。
本研究では、Msp1によってミトコンドリア外膜から引き抜かれた誤配送テイルアンカー(TA)タンパク質が、ER-ミトコンドリアコンタクト(ERMES)を介してER膜に移動するかどうか、ペルオキシソーム膜に一部局在するMsp1がペルオキシソームに誤配送されたTAタンパク質の配送やり直しを行えるかどうか、ペルオキシソーム行きシグナルを有したままミトコンドリア膜に誤配送させたTAタンパク質が、ERを介さず直接ペルオキシソームに移行し直せるかどうか、 ER膜からミトコンドリア外膜に誤配送されたTAタンパク質以外の膜タンパク質について、Msp1が同様の配送やり直しを行えるかどうかについて検討するとともに、Msp1と協同して配送の校正を行うシャペロン等の未知の因子の検索を行う。これらの解析を通じて、校正の対象となる誤配送されたタンパク質や、配送のやり直しにどのくらい一般性があるのかを明らかにし、校正に伴うタンパク質のオルガネラ間移動がオルガネラ間コンタクト部位を介して起こるかどうかを検証する。様々な機能が提案されているオルガネラ間コンタクトの機能に、タンパク質の移動という新たな働きが付け加わることで、本領域の主題であるオルガネラゾーンに注目したオルガネラバイオロジーが大きく広がることが期待される。

代表的な原著論文

  1. Araiso, Y., Tsutsumi, A., Qiu, J., Imai, K., Shiota, T., Song, J., Lindau, C., Wenz, L.-S., Sakaue, H., Yunoki, K., Kawano, S., Suzuki, J., Wischnewski, M., Schütze, C., Ariyama, H., Ando, T., Becker, T., Lithgow, T., Wiedemann, N., Pfanner, N., Kikkawa, M., and Endo, T. (2019) Structure of the mitochondrial import gate reveals distinct preprotein paths. Nature 575, 395-401

  2. Matsumoto, S., Nakatsukasa, K., Kakuta, C., Tamura, Y., Esaki, M., and Endo, T. (2019) Msp1 Clears Mistargeted Proteins by Facilitating Their Transfer from Mitochondria to the ER. Mol. Cell 76, 191-205

  3. Sato, T.K., Kawano, S., and Endo, T. (2019) Role of the membrane potential in mitochondrial protein unfolding and import. Sci Rep. 9, 7637

  4. Sakaue, H., Shiota, T, Ishizaka, N., Kawano, S., Tamura, Y., Tan, K.S., Imai, K., Motono, C., Hirokawa, T., Taki, K., Miyata, N., Kuge, O., Lithgow, T., and Endo, T. (2019) Porin associates with Tom22 to regulate the mitochondrial protein gate assembly. Mol Cell. 73, 1044-1055 (2019)

  5. Kawano, S., Tamura, Y., Kojima, R., Bala, S., Asai, E., Michel, A.H., Kornmann, B., Riezman, I., Riezman, H., Sakae, Y., Okamoto, Y., and Endo, T. (2018) Structure-function insights into direct lipid transfer between membranes by Mmm1-Mdm12 of ERMES. J. Cell Biol. 217, 959-974

総説

  1. Tamura, Y., Kawano, S., and Endo, T. (2020) Lipid homeostasis in mitochondria. Biol. Chem. doi: 10.1515/hsz-2020-0121. Online ahead of print
  2. Endo, T. and Sakaue, H. (2019) Multifaceted roles of porin in mitochondrial protein and lipid transport. Biochem. Soc. Trans. 47, 1269-1277
  3. Sakaue, H. and Endo, T. (2019) Regulation of the protein entry gate assembly by mitochondrial porin. Curr Genet. 65, 1161-1163

  4. 荒磯裕平,遠藤斗志也 (2020)ミトコンドリアタンパク質搬入ゲートTOM複合体〜クライオ電子顕微鏡による立体構造の解明. 実験医学 38 増刊「イメージング時代の構造生命科学, 697-700
  5. 阪上春花,遠藤斗志也 (2019) ミトコンドリアタンパク質の膜透過装置. 実験医学 37 増刊「ミトコンドリアと疾患・老化」,1903-1908